「好きになったっていい。」
彼と逢うほどに、そう思うようになった。
最初は、ただの体の関係のはずだった。
それ以上はないと思っていたのに、
彼の声や言葉の温度が、いつの間にか私の中に居場所を作っていった。
それが「恋」なのか「依存」なのか、そんなことはもうどうでもよかった。
ただ、私の心は彼に向かって開いていくのを止められなかった。

この気持ちは、きっと自分勝手だと思う。
誰かの夫を想いながら、幸せを感じるなんて。
世間では、私は悪者だ。
人のものを奪った女。
だけど、そんな言葉では片づけられない感情が確かにここにある。
この広い世界で、数えきれない人が生きている中で、
彼が私にメッセージをくれた。
それだけで嬉しかった。
出会い方や理由なんてどうでもいい。
知り合えたことに、きっと何か意味があるのだと思いたかった。

迷惑なやつ。勝手すぎる。性格が悪い。
そう思われてもかまわない。
言わなければいいだけのこと。
誰にも相談できない恋は、本当に苦しいものだ。
それでも、私は彼を想うことで、自分を少しずつ取り戻していた。
正直に言えば、私は昔から人と関わることが苦手だった。
うまく話せず、誤解されやすく、
集団の中ではいつも少し浮いていた。

きっと、それは育った環境のせいだ。
家庭の中に、心を許せる場所がなかった。
小さな頃から、息を潜めるように生きてきた。
だから、人と深く関わることにどこか怯えていたのだと思う。
社会に出ても、その生きづらさは消えなくて
表面だけ笑って、心の奥ではいつも冷めていた。
けれど、彼と出会って初めて、
“素の自分”でいられる気がした。
自分らしく生きてる感じがした。
彼の前では、言葉を飾らなくてもいい。
沈黙さえも、どこか心地よかった。

だから私は、彼を好きになることを選んだ。
たとえその道が間違っていても、
自分の心が「この人といたい」と叫ぶのなら、その声にだけは正直でいたかった。
彼を好きでいることは、
誰かを傷つけることでもあるかもしれない。
でも同時に、
長い間、誰にも触れさせなかった私の心が、
ようやく動き出した瞬間でもあった。
私は、私の心を優先することにした。
――私だって、誰かを好きになりたい。

そう思ったときから、
私は少しずつ、弱くなっていった。
独りが怖くなった。
今までの自分とは違う感覚が、
静かに胸の奥で芽を出していた。
👇第3章では自分が置かれた複雑な関係性の中で揺れ動く気持ちを書いています。





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